2年間続いた戦火がやみ、ようやく平和の光が差しつつある。イスラエルとイスラム組織ハマスの双方が停戦合意を厳守し、恒久和平に向かって歩んでほしい。
トランプ米大統領が主導したパレスチナ自治区ガザの和平計画で、イスラエルとハマスが「第1段階」に合意し、停戦が発効した。
イスラエル軍は合意した地点まで部隊を撤収したと発表した。ハマスは戦闘開始後に拘束した人質20人を全員解放し、拘束中に死亡した人質の遺体も返還する予定だ。
イスラエルは見返りに、拘束していたパレスチナ人約2千人を釈放した。
トランプ氏は「戦闘は終わった」と明言した。停戦はおおむね順守されているという。ガザだけで少なくとも7万人近い死者を出した戦闘が止まり、パレスチナとイスラエルは歓喜に包まれている。
停戦を心から歓迎したい。食料や医薬品が枯渇するガザでは、飢えなどの人道危機が深刻化していた。近く支援物資が届く見通しだ。
戦闘が激しいガザ北部からの避難を余儀なくされていた住民の帰還も始まった。建物の約8割が破壊され、がれきの山と化す。平和な日常が戻り、生活再建が進むことを願わずにいられない。
停戦は戦闘開始直後の2023年11月と今年1~3月の2回あったが、いずれも短期間で崩壊した。
イスラエルのネタニヤフ連立政権には、停戦に反対する極右閣僚がいる。ハマスの合意違反を口実に攻撃を再開する懸念は残る。
米国は中東に派兵し、仲介国のカタールやエジプトと共に停戦合意違反の有無を確認する。停戦が継続するように当面は関係国が関与しなくてはならない。
停戦実現はトランプ氏の力によるところが大きい。ガザ住民が域外に移住する和平構想を引っ込め、イスラエルに偏らず、アラブ諸国にも受け入れられる現実的な計画をまとめた。
ノーベル平和賞狙いが批判されているとはいえ、犠牲者の増加に歯止めをかけた功績は率直に評価していい。
停戦から和平への道は険しい。「第2段階」ではハマスの武装解除、イスラエル軍のガザ撤収といった難問が待ち受ける。ガザの戦後統治を誰が担うかも不透明だ。
トランプ氏はエジプトで開かれたガザ和平の首脳級会合で、第2段階への交渉が始まったと強調した。出席した20カ国以上の首脳らは、復興や和平プロセスを後押しすることで一致した。
日本も協力したい。ガザの再建には530億ドル(約8兆円)以上の費用がかかるとの報告がある。日本に期待される支援だろう。
恒久的な中東和平には、トランプ氏と国際社会の協調が不可欠だ。その結束をウクライナの和平実現にも生かしてもらいたい。
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